Geoffrey Bawa
スリランカを代表する建築家ジェフリー・バワ(1919–2003)は、イギリスのケンブリッジ大学で法律を学び、弁護士としてキャリアをスタートさせました。その後、建築への深い関心に突き動かされ、ロンドンのAAスクールで建築を学び直します。建築士の資格を取得したのは38歳のときで遅咲きのスタートでした。1950年代後半にコロンボに戻ってからは、スリランカ各地で数多くの公共施設、宗教建築、ホテル、教育機関、個人住宅などを手がけるようになります。代表作には、自邸兼アトリエ「No.11」や、「ベンドタ・ビーチ・ホテル」、「カンダラマ・ホテル」、さらにはスリランカ国会議事堂などが挙げられます。
熱帯の気候風土とモダニズムを融合させた「トロピカル・モダニズム」の先駆者として広く知られ、アジア地域の特性を取り入れた建築的アイデンティティと美学の形成に貢献し、その思想は今も建築界で高く評価されています。
しかしこれまで、バワの建築作品以外についてはあまり注目されていません。実際は、建築にとどまらず、庭園や家具、グラフィックデザインに至るまで、総合的な空間演出にこだわりを見せていました。多くのプロジェクトでは、既製品ではなく建築空間に合わせて特注された家具が取り入れられています。彼の家具は、個々の作品としての美しさだけでなく、建築との一体感を意識してデザインされました。シンプルでモダンな造形は、機能性と美しさを巧みに両立させ、空間全体を豊かに演出しています。現在、ジェフリー・バワ財団とインドの工房ファントム・ハンズが提携して家具や照明の復刻生産を行っています。